
メルセデスベンツが新展開するミトスシリーズから、最初のモデルとして「メルセデスAMGピュアスピード」がデビューする。ルーフはおろかフロントガラスすらオミットされた完全オープン2人乗りモデルは、パフォーマンスカーを妥協なく実現しつつレーシングカーへのオマージュに溢れ、ドライバーと同乗者は走行中に感じるすべてのフィーリングを楽しめるだろう。伝説のレーシングカーの要素を再解釈し、魅力的で時代を超越したシルエットを採用する魅惑の1台に迫ろう。
●文:月刊自家用車編集部 ●写真:Mercedes-Benz AG
メルセデスベンツの新ブランド「ミトスシリーズ」、その最初のモデルとしてデリバリー
そもそもメルセデスベンツは、高性能かつハイアッパー層に向けたラグジュアリーなクルマつくりをブランド設立時から続けてきた。
ブランド価値を高めるため、レーシングモデルを作成しサーキットを席巻したりもしたが、その根底にあるのは、やはり富裕層にふさわしい豪華かつ信頼性の高い堅牢なクルマづくりにある。
しかし、時代の求めに応じ、メルセデスベンツは190EからCクラス、さらにAクラスといった比較的コンパクトなモデルや、オフローダーのGクラス/ミニバンのVクラスなど、実用車や庶民向けのクルマも製造し始める。
高級車専門ブランドではなく総合自動車メーカーへと変貌したメルセデスベンツは、そのいっぽうで高性能を誇るスポーティーなAMGシリーズや、伝説的な超高級車ブランド・マイバッハシリーズをハウスブランドとして設定するなど、自らがそもそもハイブランドメーカーであるとのアピールも忘れていなかったが、庶民向けモデルに埋もれて、少々“特別感”が薄れている印象が高まっていることにも気づいていた。
そこで新たにメルセデスベンツが打ち出した施策が、AMGやマイバッハを凌ぐ最上級ブランド「ミトスシリーズ」の展開だ。さらに高性能でさらに豪華なシリーズを展開し、ブランドバリューを高めることがミトスシリーズの役割であり、その第1弾として「メルセデスAMGピュアスピード」が企画されたわけである。
メルセデスベンツの最上級ブランド「メルセデス ミトスシリーズ」の第1弾モデルとしてリリース予定の「メルセデスAMGピュアスピード」。メルセデスベンツのヒストリーを彩った名車からのさまざまなオマージュが採用されている。
フロントウインドウもルーフもないバルケッタスタイルの2人乗りロードスター。乗員席の前にはわずかに盛り上がった極小のディフレクターが備わるが、この程度でも車内への乱気流流入は相当抑えられるという。メルセデスAMG ONEにも似通ったフロントフェイスが与えられている。
ボディカラーにも隠された秘密あり
モータースポーツへのオマージュとして、シートの後ろにある2つのエアスクープにはAMGのエンブレムが付き、1955年にイタリアで開催されたミッレミリア(1000マイルレース)でスターリング・モスとデニス・ジェンキンソンが優勝した300SLRなどの伝説的レーシングカーを彷彿とさせる。
ピュアスピードのボディカラーはミスティックシルバーマグノのシルバーアロー仕上げをベースとするが、オプションのモータースポーツスタイリングパッケージでは、ルマンレッドからAMGパターンのブラックグラファイトグレーまで、さまざまな仕上げが用意される。
ちなみに20世紀のレースシーンで、レッドのボディカラーは伝統的にイタリア車がナショナルカラーとして採用し、ドイツ車はホワイトが定番だったものの、100年前にシチリアで開催されたタルガフローリオレースで地元イタリアの熱狂的なファンから妨害を受けるのを防ぐため変更したという逸話がある。
カーナンバー10番のメルセデス製2リッターレーシングカーは見事優勝。この100年前の勝利を記念して、オプションのモータースポーツスタイリングパッケージでは、フロントウィングに「10」の文字が刻まれているという。
フェンダー上に備わる「10」の文字は、タルガ・フローリオで優勝したクリスチャン・ヴェルナーが駆るメルセデス製2Lレーシングマシンのカーナンバー「10」をオマージュしたもの。オプションのモータースポーツパッケージで選べるボディカラーのレッドも同レーシングカーに由来する。
最高速度は315km/h、0-100km/h加速は3.6秒
車内に大量のエアが流入するオープンルーフボディ(さらにフロントウインドウもないバルケッタスタイル)は、最高速などのスペックは伸び悩むものだが、ピュアスピードは空力的に最適化されたボンネットをはじめ、アクティブエアロダイナミクスシステムや伸縮式リアスポイラー、アンダーボディへのダウンフォース向上システムほか多数の施策を用いて、最高速度を315km/hまで伸ばしてきた。
これには、メルセデ AMGのスポーツカーアーキテクチャに基づいた自立構造のアルミニウムスペースフレームも大きく貢献。軽量かつアルミ以外にマグネシウムやカーボンなどの異素材を用いて、最高レベルの剛性を実現した。
また、パワートレーンも強力だ。4リッターV型8気筒DOHCツインターボガソリンエンジンは、最高出力585ps/最大トルク800Nmを発揮。これをAMGスピードシフト9速ATを介して、可変式全輪駆動システム(AMGパフォーマンス4MATIC+)によって路面に伝える。
足まわりにはAMGアクティブライドコントロールサスペンション/AMGセラミックコンポジットブレーキシステム、ホイールはフロント9.5J×21インチ/リヤは11.0J×21 インチの極太大径サイズが備わる。
搭載する4リッターV8ツインターボは最高出力585ps/最大トルク800Nmを発生する。オープントップボディを採用しながら最高速度315km/h、0-100km/h加速は3.6秒のパフォーマンスは見事だ。
AMGアクティブライドコントロールサスペンション/アクティブリアアクスルステアリングなど、走行性能や快適性能は最新システムによって担保されている。ちなみに専用ヘルメットも2種類用意され、ボディカラーとコーディネート。インターコム付きなので同乗者とのコミュニケーションも万全だ。
IWCの時計をビルトインした豪華なインテリアも見どころ
ピュアスピードを特徴づける要素のひとつが「HALOシステム」だ。従来のAピラーの代わりに採用されているHALOシステムは、2018年以降、すべてのF1車両に搭載されているものを応用したシステムで、車両のシェル構造にしっかりと取り付けられる二股に分かれた頑丈な鋼管ブラケットが、事故の際にドライバーの頭部を保護する。
ロールオーバー保護システムには、エアロダイナミクスに優れたスクープの下に2つの剛性ロールバーも備え、これらのコンポーネントもシェル構造の一部を構成する。HALOシステムの下部は細いLEDストリップによって間接的に照らされるのもユニークだ。
インテリアは、クラシックなツートーンカラーとクリスタルホワイト/ブラックのコンセプトを採用。特別なレザーカバーとユニークな装飾ステッチを施したAMGパフォーマンスシートは、エクスクルーシブな外観に加え、最適な横方向のサポートを提供する。
シート背後のエリアにはカーボンファイバーが使用され、背面に一体化されたレザーパッドはシートの流れるようなラインを引き継ぎ、ディープパイルのAMGフロアマットはシートの色/デザイン/装飾ステッチを反映したもの。
さらにインテリアを演出する白眉が、IWCがデザインした特注のアナログ時計だろう。ダッシュボードの中央に目立つよう設置されており、光沢のある黒の雫型のハウジングにカーボンファイバー製のベースが取り付けられている。
このプレミアムクロノメーターは、ベースから浮いているように見えるデザインがなされ、ピュアスピード専用の文字盤を採用。文字盤は夕暮れ時や暗闇で点灯し、特徴的なベゼルは伝説的なIWCインジュニアコレクションとの視覚的な親和性を強調している。
そして、15個のスピーカーと1170Wのシステム出力を備えたBurmesterハイエンド3Dサラウンドサウンドシステムが、没入感のあるサウンド体験を提供する。
高級時計ブランドのIWCが制作に携わったアイテムが、ダッシュボード上に燦然と輝く。ブラックダイヤルに太めのインデックスは、走行中でも確認しやすいだろう。周囲の明るさに応じて自動的に点灯するギミックも備えている。
スポーティーさとエレガントさを両立するインテリアは、最新メルセデスベンツのフィロソフィを体現したもの。シックなツートーンカラーは見る者を惹きつける。コクピットを横断するHALOシステムも印象的だ。また、カスタマーには専用の屋内用カーカバーも提供される。
希少な250台限定モデル、まもなく登場
メルセデスAMGピュアスピードは、センターコンソールのバッジに「250/1」とレタリングが施され、このモデルが希少な250台限定のミトス シリーズの1台であることを示している。
価格/詳細スペック/デリバリータイミングは未発表だが、すべてのメルセデスベンツの頂点に君臨するミトス シリーズの第1弾、メルセデスAMGピュアスピードは、ぜひ実車を目にしたい1台だ。
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。
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